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「夏の晩酌」

「晩酌」というささやかな娯楽へ向かう一日の思考。

今宵堂は、鴨川ほとりの町家にて、夫婦ふたりと小さな娘で営む酒器工房です。
夕飯の前に美味しいお酒と肴をちょっとだけつまむ「晩酌」の時間が日々の楽しみ。
このほんのひとときの出来事は、その酒卓に辿りつくまでに実は楽しい道程があります。

冷か燗か?
それともビールか?
酒なら何処のお酒にしようか?
季節の肴は?
商店街へ行こうか?
それともきょうはスーパーの安売りの日だったかな?

「晩酌」というささやかな娯楽へ向かう一日の思考。
そしてできあがった酒卓を「今宵堂晩酌帖」というかたちでInstagramにもまとめています。
今回は、夏という季節の小さな酒卓を七つ綴ってみることにしました。

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Day 1「なかむラー油冷奴」

きょうの晩酌は、仙台「肴処やおよろず」<http://construct-morment.com/yaoyorozu/>さん特製の「なかむラー油」のっけ冷奴。
酒場の親父さんが考案した、この食べるラー油。ガツンと効いたニンニクが梅雨バテを吹き飛ばしてくれそうです。
調味料の世界はおもしろい。醤油に味噌に薬味たち、そしてこの彗星のごとく現れた、食べるラー油。京都が誇るお豆腐は調味料の格好の受け皿ですね。
日本酒は、ピンクのラベルがこちらもガツンな栃木「松の寿」純米吟醸ひとごこち。

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Day 2「肴パン」

きょうの晩酌は、北大路新町「さざなみベーカリー」<http://tabelog.com/kyoto/A2601/A260503/26016465/>さんのパン。
全国屈指のパン消費量の街でもある京都。私たちにとって晩酌の中のパンは、バゲットのように料理を引き立てる素朴なものではなく、いわゆる「お総菜パン」。
彼らはメインプレートの脇役ではなく、堂々たる存在感をもって、酒卓に君臨する「肴」なのです。
今宵は、ドライトマトとチーズのフォカッチャ。葡萄酒のようなコエドビールで、蒸す夕方に潤いを。

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Day 3「カップ酒」

きょうの晩酌は、茨城「来福」の純米カップとタコ酢。カップ酒は、ワンコイン前後で気軽に一杯楽しめる乙なサイズ。
安くて手に入りやすいこの一本も、各蔵がコストパフォーマンスを考えて作っているミニマムな逸品であると思います。
出張帰りの新幹線や旅土産にもひとつ。呑む背景次第では、小さくてもなんだか贅沢な気分。それがカップ酒の良さですね。
肴は、煮ても焼いても旨い旬の蛸を千鳥酢で和えて。酸味に癒される雨上がりです。

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Day 4「CO2」

きょうの晩酌は、福岡「とどろき酒店」<http://todoroki-saketen.com/>さんプロデュースの微発泡日本酒「CO2」。
七夕の日に解禁されるこのお酒には、酒呑みも初心者も、日本酒という枠を越えていろんな人に呑んでもらいたい、という思いが込められています。
キーンと冷やして、ぐびっと呑んでみたくなる爽やかさと、しっかりとした日本酒ならではの風味が特徴。
今宵堂がオリジナルで作らせてもらった「酒コップ」でごくごくと。
丸太町「リンデンバーム」<http://www.linden-baum.jp>さんの新生姜のソーセージと京番茶のソーセージをかじりつつ、織姫と彦星に乾杯。

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Day 5「からし鷄」

きょうの晩酌は、近所の中華「鳳飛」<http://tabelog.com/kyoto/A2601/A260503/26002211/>さんにて名物「からし鶏」をつつきます。
揚げた鶏肉に唐辛子がたっぷり効いた餡がかかったこのひと皿。辛い、とにかく辛くて旨い。そしてこれほどビールを呼ぶ中華は無いと思えるほどの酒肴感。
京都の中華は、独特のコクと爽やかさを兼ね備えた銘店揃い。
昔、紫明通りに「鳳舞」という広東料理店があり、そこから独立したお弟子さんたちの店は「鳳舞系」と呼ばれ、地元で根強い人気を誇っています。
「鳳飛」もそのひとつ。あんかけを最後まで箸ですくってぺろり。
雑誌に華を咲かせる銘店よりも、近所の町衆に愛される銘店にしびれる粋なミーハーを目指しております。

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Day 6 「からあげとビール」

きょうの晩酌は、北大路橋袂の洋食店「はせがわ」<http://tabelog.com/kyoto/A2601/A260503/26001680/>さんの唐揚げとグランドキリン。
雨上がり、川原へと足を運んでシートを広げると、大好きな鴨川晩酌の始まり。
「はせがわ」の魅力は、レストランの横にあるお持ち帰りのコーナー。晩酌のお伴を探すなら、小脇に掲げられた一品メニューに注目。
あつあつの揚げたてが手渡されます。ビールは定番もいいけれど、夏はコンビニ限定の新商品が目白押し。
こんなジャケ買いも楽しみのひとつですね。ちょっとこだわった夏の鉄板晩酌がうれしい。

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Day 7「山芋鉄板焼き」

きょうの晩酌は、北大路「がーでん」<http://okonomiyaki-garden.co.jp>さんの山芋の鉄板焼き。
娘とともに通い続けている近所のお好み焼き屋さん。娘の成長とともにソース・マヨネーズかけに青のり・鰹節振りを目下特訓中。
大阪人の母の厳しい眼差しが光る中、ようやく、コテも上手になりました。関西に生まれたからには、受け継いでほしい鉄板焼き文化。
お好み焼きの前の一品でジョッキビールをぐびりといくのは、彼氏の前では真似しないでほしいものですが。

Day 8

ここ数年、「小商い」という言葉をよく目にするようになった。
「小商い」とは何か?…平川克美さんによると「自分の手の届く距離、目で見える範囲、体温を感じる圏域でビジネスをしていく」ということである。
(もっと詳しく知りたい方は、ミシマ社(mishimasha.com/)から出版されている平川克美さんの著書『小商いのすすめ「経済成長」から「縮小均衡」の時代へ』という本を読んでみて下さい。)

私が住んでいる京都は、「小商いのメッカ」とも呼べる場所で、個性的な小店主が、思い思いの個性的なスタイルで商売を営んでいる。
私は、大学入学から32歳まで地元京都を離れ、東京、名古屋、松戸(千葉県)、小矢部(富山県)、…と様々な街で暮らしてきた。
だが、これほどに「小商い」が元気な街はないのではないだろうか。
たまに京都に戻ってくる週末、気の合う小店主のもとを訪れ、語らう時間が私にとってどれほど心のやすらぎになっただろうか。
33歳の今、それが当たり前の日常となり、とても豊かな生活だなと思っている。

さて、前置きが長くなったが、私が知りうる限り「小商い」「職住一体」というスタイルを最も素敵に体現している夫婦が今宵堂(koyoido.com/)の上原夫婦そして愛娘のほろちゃん家族だ。

丁寧に手入れされた町家の1階をギャラリーと工房と食卓に、2階を住居に生活を営まれている。
でも、実は旦那さんの連さんは福岡県出身、奥さんの梨恵さんは大阪府出身である。
「京都人より京都人らしい暮らしぶり」とは、生粋の京都生まれ京都育ちである私の家族の共通見解だ。

ただ、お2人は単なる「懐古趣味」ではない。

旦那さんの連さんは、元々京都のゲーム制作会社のデザイナー。
デザイン面を中心とした今宵堂さんのブランディングは連さんの手によるところが大きいが、中でもブログやSNSでの発信に長けている。
中でも、「晩酌」をテーマに毎日UPされる写真が、陶器やうつわ好きだけでなく、感度の高いお酒好きの若い世代の心にヒットした。

作品に溢れるユーモアセンスも抜群で、例えば可盃(べくはい)と言うわざと穴を開けたお猪口がある。
これは、穴を指でふさいで、こぼれないように一気に飲み干さないといけない趣向である。
お酒の強要はいけませんが、「酔い」大人にはこんな粋な遊びも許されます。

このように、今宵堂さんの魅力は、伝統的な価値観と新しいセンスの「ハイブリッド」なのである。

興味を持った方は、是非気軽に「今宵堂」さんを訪れて欲しい。
私は、2008年頃今宵堂夫妻とお知り合いになった。(元々私と梨恵さんは、同じ職場で働いていたのだ。)
当時は、こちらの気が向いた時にいつでもふらっと遊びに行けたのだが、最近はオーダーから納品まで半年~1年待ちはざらの人気作家さんである。

日本全国各地のイベントにひっぱりだこなので、京都以外の方も会えるチャンスはある。
営業日やイベント開催日はHPでチェックを!

野暮を承知で、最後に一言。
「小商い」とは、商売のスタンスのことを言うのであって、「商いが小さい」と同義ではない。

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